4つの観点からの成果創出を目指す
K4 Digitalでは現在、「財務」「人財」「組織」「基盤」の4つの観点から成果を創出することを目指して、次のような活動を行っています。
「財務」では、例えば、機械学習を用いたマーケティングデータ分析結果に基づく効果的な販売施策の導出、あるいは、燃料や卸電力の高精度な取引価格予測などのデジタル施策により「売上拡大 ・コスト削減」へ貢献します。
「人財」については、さらに2つの取り組みに分かれます。ひとつは社員向けの研修プログラムである「関西電力グループアカデミー」に対する支援で、データ分析や可視化ツールなどに関する研修を実施し、データサイエンティストなど高度デジタル人材の育成・拡充を図ります。もうひとつはK4 Digital自身のスキルアップです。関西電力のデジタライゼーション推進グループとアクセンチュアメンバーが合流し、関西電力グループの「デジタルCoE」として当初42名で発足したK4 Digitalですが、現在では約100名まで体制が拡大しています。グループ各社から出向してくる新規メンバーに対しても、年間に達成すべき定量的な目標(スキルスコア)を設定し、育成を図っています。
「組織」については、関西電力グループにおけるデータアナリティクスやAIソリューションを中核としたデジタル技術のCoEとしての役割を果たし、先進的なワークスタイル等も実践・情報発信し、「デジタル革新文化」を醸成していきます。
そして「基盤」では、デジタル施策推進に不可欠となるデータマネジメントの整備にあたるとともに、データ分析基盤などのインフラ整備、デジタル化方法論の確立、知財の蓄積などを推進していきます。
DX推進事例:
関西電力送配電におけるデジタル化施策を支援
K4 Digitalの取り組みの一環として、関西電力送配電に向けたDX推進の支援が行われています。関西電力送配電は2020年4月に実施された「発送電の法的分離」に伴い、関西電力から分社化された、文字どおり送配電を専任で営む専業会社です。
関西電力送配電の理事である松浦康雄氏は「人々の生活や社会産業を支える電力とエネルギーを、安全かつ安定的、低コストでお届けすることが私たちのミッションです」と話します。
ただし、そのためには解決しなければならない課題がありました。同社は近畿2府4県に約280万本の電柱を所有していますが、この中には高度成長期からバブル期にかけて短期間で設置されたものがかなりの割合を占めています。実はそこに潜在的な問題があり、設置から60~70年の耐用年数が経過すると、これらの電柱にはほぼ同時期に、改修や取替えのピークが到来してしまうのです。
「少子高齢化によって保守要員が慢性的に不足している現在、高度成長期と同じマンパワーを確保することは不可能です。点検の結果、健全なものは改修の時期を延ばし、逆に劣化が進んだものは前倒しで改修するというように、可能な限りピークを平準化し、現状のマンパワーでも効率良く工事を回せる改修計画を立てなければなりません」と松浦氏は話します。
もちろん関西電力送配電としても、今日までただ手をこまねいていたわけではありません。関西電力から分社化する以前の7~8年前から、同社の作業者はモバイル端末を持って定期点検に回っており、各電柱の状態を入力することでデータ化を進めてきました。約280万本の電柱に対して、2巡目の点検データを蓄積しており、同社はこのデータをもとに改修計画を立てることを考えたのです。
「そこでK4 Digitalを通じてアクセンチュアのデータサイエンティストの手を借りることにしました。各電柱の点検(状態)データだけでなく、その電柱はどんな場所に設置されているのかも考慮し、例えば塩分を含んだ潮風の影響を受ける海の近くにある、といった立地環境を組み合わせたビッグデータ分析を実施しました」(松浦氏)
具体的には、アクセンチュアのデータサイエンティストが外部のオープンデータから気象情報や河川情報などの環境データを集め、関西電力送配電の設備データとあわせて約180種にも及ぶデータの中から試行錯誤を重ねて約100種類のデータを厳選。各電柱の点検データと組み合わせ、勾配ブースティングと呼ばれる機械学習アルゴリズムを適用することで、改修計画のベースとなる精度の高い予測モデルを実現しました。
関西電力送配電は引き続き、この予測モデルのブラッシュアップに注力していきます。今後において作業者のマンパワーがさらに低下した場合でも、対応可能な改修計画の自動的・自律的な立案および改修業務そのものの改革、働き方改革、ペーパーレス化によるメンテナンスコストの削減など、本格的なDXを見据えてステップを進めていく意向です。