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事例紹介 関西電力

伝統ある基幹事業だからこそ最先端テクノロジーが活きる 関電グループの火力事業DXを支援

ライフラインとして欠かせない電力供給者としての立場から、様々な取り組みに挑戦している関西電力グループ。いち早く着手したデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略は、グループ内各部門で着実に推進されてきています。アクセンチュアはその初期段階から、DX推進体制の一角として技術支援を行うK4 Digitalと共にグループのビジネス変革の取り組みを支援しています。

5分(読了目安時間)

高い専門性を持つ組織の設立と運用がDX推進の鍵

日本初のデジタルユーティリティ実現を目指し、2018年に関西電力とアクセンチュアの合弁会社として設立されたのがK4 Digitalです。

「デジタルを『変革のコア』と位置づけ、デジタルで競争優位を築く」。この認識のもと、DXを中期経営計画の取り組み推進の原動力と位置づける関西電力グループ。その一員であるK4 Digitalは、グループ全体の技術力と人財の両面から支援することをミッションとした高い専門性を持つ組織として、各事業部門のDX推進の取り組みを支えています。

「全社で展開しているDX戦略委員会があり、トップの強いリーダーシップでDXを進めています。その中でK4 Digitalも設立し、各事業部門の取り組みに丁寧に伴走してくれている。我々がDXを進められる要因としては、こういう組織を立ち上げて運用していることが一番大きいでしょう」(関西電力株式会社 火力事業本部副事業本部長兼原子力事業本部副事業本部長 浅野 純一氏)。

「事業部門の方がやりたいと思ったらいろいろ試してみることができる、そういう環境が整っています」(K4 Digital株式会社 代表取締役社長 梅本 潤氏)。

 未来を見据え、日々稼働する事業を停滞させることなく、可能な限りの最新のテクノロジーを組み込み、実際の事業での成果を挙げることを目指すDXの道のりは、業界を問わず長く続くものと言えます。その推進体制を整え運用を続けて約7年。関西電力グループのDXは、業務単位のデジタル化を通した効率化だけでなく、事業部門におけるビジネス変革そのものに繋がりつつあります。

関電グループには、事業部門ごとに確立されたやり方や大事にする考え方がありますので、我々もそれと同じ目線に立ちながら、ちょっと前提を疑う視点を持つ。事業部門の方々と長期的に一緒に取り組んでいく中で、少し先の未来を考え、ちょっとハングリーに、またできるだけ価値を拡大できるよう「もう一歩踏み込んで変えられるのでは?」と、そういう視点を提供するのが大事だと思っています。

梅本 潤氏 / K4 Digital株式会社 代表取締役社長

K4 Digital これまでの実績

474件

2018~2024年度における実用化件数(全610件中)

約270億円

2024年度単年DX効果

人は高度で高付加価値な判断に集中。それを支援するDX

関電グループ内の各事業部門とK4 Digitalとで進められているプロジェクトの中でも実装段階に入っているのが、火力発電所における発電設備の運用管理・保守点検業務の効率化と高度化を図るデジタル化の取り組みです。

「デジタルが得意とする分野はデジタルに任せていこうと。そういうポリシーで進めています」(浅野氏)。遡れば19世紀終わりからある”伝統的な”事業でもある火力発電所のDXは、どのように進められているのでしょうか。

課題-求める変化

電力の需給調整の主軸であり続けることとは

「我々のミッションは、安全かつ安定的に発電して、電力をお届けすること、これに尽きる」(浅野氏)。この不変の使命を完遂するにあたり、火力発電には、昨今の再生可能エネルギーの拡大により以前に増して電力の需給を調整する役割が求められています。簡単に言えば、電力が足りない際は稼働し、足りていれば停止する。とはいえ発電所は、大規模な機械を起動させ運転する工場であり、需給調整のため「起動・停止」の回数が多くなれば、機械にストレスがかかります。そんな負荷の高い状況下で、指令通りの稼働を継続させるには、機械の状況を正確に把握し、どのような状況にも最適なタイミングで対処できる専門的な知見が、常に求められます。 

また、火力発電所のコア業務であるO&M(オペレーション&メンテナンス)では、定期的な設備の巡視点検はもちろんのこと、発電設備の運転中に何らかの異常が発生した場合、運転継続か、応急的な復旧が必要か等、瞬時に判断する必要があります。それは知識や経験に基づく高度な判断であり、「起動・停止」の回数が増えれば、その判断が求められる機会もおのずと増えてきます。

一方で、労働人口の減少による将来の働き手不足に加え、ベテラン技術者の退職、それに伴う技術の伝承の難しさもあり、今まで以上に「少人数で効率的かつ高精度な業務の遂行」への対応が急務となっていました。

取り組み-技術と人間の創意工夫

事業のプロと最新テクノロジーのプロ。相互理解と知見を重ね、初の実装化を可能に

もともと人~発電所所員が、発電設備を巡回し目視などで確認していた巡視点検業務。一連の業務における省力化・高度化による生産性向上に向け、その第一歩として取り上げられたのが、巡視点検業務の自動化でした。

まず、その設備情報の収集について、固定センサーやカメラを搭載した自動走行型ロボットが担える仕組みを構築しました。その中で、これまで蓄積されてきた点検データやノウハウを画像解析AIに学習させ、それを土台に、各設備の運転状況が正常であるか診断を行うAIを活用した巡視点検自動化システムを開発しました。

 このプロジェクトで、特に大きな課題となったのが、誤検知の問題です。実証実験を重ねる中で、異常な状態ではないのに、自動解析の結果として「異常」と判断されてしまう。この頻度を極力減らすため、様々な改良が重ねられました。

これまでにも業界内で自動走行型ロボットの利用事例はあったものの、実用に耐える先例がない中、2025年度の実装化が実現されたのは、K4 Digitalの人財の力を活用できたからとのこと。

 「私たちは、自分たちの事業のプロではありますが、最先端テクノロジーを常にキャッチアップして活用できる形にしていくところは、やはりそのスペシャリストには敵わない。私たちの事業も理解してもらった上で、グループ会社であるからこそいつも伴走してくれて、アジャイルに対応してもらえるのは、ありがたいですね。」(浅野氏)

 「誤検知の問題は、各事象としては小さなことでも、現場の方にとってみれば単なる数字上の問題ではなく、実際に一つ一つ解決していかなければいけないものです。そういう作業に伴走させていただいて粘り強く解決していく。それを積み重ねることで実装まで進めることができたと思います。」(梅本氏)

発電所のビジネス改革を含めDXを推進する立場として、いろいろ形になってきていますが、まだまだ道半ばだと思っています。「安全かつ安定的に電力をお届けする」を一丁目一番地として、将来を想像していく。火力事業本部のメンバーからも、K4 Digitalに出向し、いろんな仕事を経験しています。その経験を経て育った人財が我々の中でビジネス改革を推進していける。これが非常に大事なことであると思っています。

浅野 純一氏 / 関西電力株式会社 火力事業本部副事業本部長 兼 原子力事業本部副事業本部長

成果-創出される価値

フォアキャストとバックキャスト。双方向からの思考でありたい姿を目指す

関電グループ火力事業本部のDX推進においては、今回の発電所建屋内設備に対する巡回点検自動システムの2025年度実装化だけでなく、データも示す通り他にも数多くのPoCや実証実験が進められ、実用化されています。また、現在の業務をベースとしたフォアキャスト(予測)からの取り組みだけでなく、バックキャスト、未来の発電所の役割や業務を描いたビジョンを元に、「将来の仕事の進め方」について仮説を立てて具体化していく取り組みも行われています。

その元となるビジョンを描いたのが、O&M3.0と銘打ち、データに基づくシームレスな発電計画・運転・保全業務の連携や、新たなスキルを持った人財育成と職場環境整備を実現する「データもココロもつながる発電所」の構想です。

グループワークをする関西電力、K4 Digital、アクセンチュアのメンバー
グループワークをする関西電力、K4 Digital、アクセンチュアのメンバー

O&M3.0作成のためのワークショップの様子

「O&M3.0は、DXもビジネス改革も含め、火力事業の未来像として、若いメンバーを中心にありたい姿をまとめたものです。今後、いろんな事例を参考にし、K4 Digitalやアクセンチュアの力、またテクノロジーを活用しながら、”我々のありたい姿”と融合させ、そのビジョンの解像度をどんどん上げていき、確たるものにしていきたいですね。」(浅野氏)

 「フォアキャストからの取り組みも、バックキャストからの取り組みもしっかりと支援していきたいです。また手段の視点でいえば、これまでどちらかというと数値的なデータ分析を多く手掛けてきましたが、生成AI利用でドキュメント系データも扱えるようなりましたので、さらにいろんな形で貢献できると思っています。」(梅本氏)

「K4 Digitalは、DXの取り組みのご支援と関電グループのDX人財育成の支援の両面があります。利用する技術がどんどん変遷する中でも、新しい技術をうまくキャッチアップし付加価値を出すこと。ここにアクセンチュアも直接貢献させていただきたいと思っています。」(アクセンチュア 素材・エネルギー本部 マネジング・ディレクター 近藤 英之)

イメージ画像:O&M3.0「データもココロもつながる発電所」のビジョン
イメージ画像:O&M3.0「データもココロもつながる発電所」のビジョン

O&M3.0「データもココロもつながる発電所」のビジョンイメージ

アクセンチュアは、これからも、関西電力グループのDX推進が成果を挙げつつ継続できる仕組みの構築と運用のため、K4 Digitalの一員として、高度なデジタル技術やコンサルティングに関する知見とノウハウと活用し、スピード感を持ってご支援を続けていきます。

緑の前に立つ紺色のジャケットを着た二人の男性。
緑の前に立つ紺色のジャケットを着た二人の男性。

(左から)関西電力株式会社 浅野氏、K4 Digital株式会社 梅本氏

チーム紹介

蓑毛 寿郎

素材・エネルギー本部 兼 ビジネス コンサルティング本部 素材・エネルギー プラクティス日本統括 マネジング・ディレクター

近藤 英之

素材・エネルギー本部 マネジング・ディレクター

湯澤 正律

ビジネス コンサルティング本部 コンサルティンググループ ユーティリティ プラクティス マネジング・ディレクター

今井 俊一郎

ビジネス コンサルティング本部 データ&AIグループ マネジング・ディレクター

岡田 直也

ビジネス コンサルティング本部 データ&AIグループ マネジング・ディレクター

桂屋 正明

Accenture Song 素材・エネルギー 日本統括 マネジング・ディレクター