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大規模投資を伴う社会インフラ形成プロジェクト成功への鍵
3分(読了目安時間)
2025/07/14
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2025/07/14
2025年3月の日経新聞で「都市再開発、遅れ・費用増8割 工期平均2.7年延長」というタイトルの記事がありましたが、アクセンチュア調査:「成功への道筋~社会インフラ&キャピタル・プロジェクトを成功させる手法とは」でも同様の結果が出ています。実に92%の社会インフラ&キャピタル・プロジェクト(大規模投資を伴う社会インフラ形成プロジェクト)が完了時期の遅延及び予算超過に直面しています。こうした状況は、地域社会への影響や経済的な損失に加え、企業の信頼喪失にもつながりかねません。何が成功の要否を分けるか、キャピタル・プロジェクトに長年関わってきた経験も踏まえ、ご紹介します。
想像に難くないのですが、日本のキャピタル・プロジェクトは、世界的に見ても高いクオリティと技術力を誇ります。しかし、その一方で、独自の課題を抱えています。ステークホルダーの監視強化、原材料費の高騰、規制環境の変化、そして人材のスキル不足。さらに、労働人口の減少と高齢化による深刻な人材不足です。熟練の技術者が引退していく中、若手の人材育成が追いつかず、技術伝承が滞ってしまう問題があります。 また、過去の成功体験にとらわれ、変化を恐れる傾向も、イノベーションの阻害要因となっています。日本のキャピタル・プロジェクトは、技術的な課題だけではなく、組織文化や人材育成といった複合的な課題に直面しているのです。
トップパフォーマー企業は、デジタルツインやAIを活用し、データから得られたインサイトを未来のための意思決定に活かしています。 サプライチェーンの最適化、リスクの早期発見、そしてプロジェクト計画の精度向上などで、デジタル技術は、単なるツールではなく、積極的に未来を切り開くための武器なのです。
プロジェクトの成功には、ステークホルダーとの良好な関係作りに長けています。 トップパフォーマー企業は、規制当局、地域社会、そしてプロジェクトに関連する全ての人々と、透明性の高いコミュニケーションを心がけています。 例えばVRや感情分析といった最新技術を活用し、ステークホルダーの懸念事項に積極的に対応することで、彼らの信頼と協力を得ています。
ご存知、サステナビリティの担保は、現代のプロジェクトにおいて、避けては通れない重要な要素です。 トップパフォーマー企業は、二酸化炭素排出量の少ない材料を使用し、環境追跡が可能なスマートセンサーを導入するなど、プロジェクトの初期段階からESGを意識した設計を行っています。 ドローンやAIを活用し、原材料の調達からオペレーション、報告まで、全てのプロセスを最適化することで、ESG目標を達成しながら、レジリエンスを高めています。
人材不足は、多くの企業が抱える共通の悩みです。 トップパフォーマー企業は、スキルギャップの分析、グローバルな人材の活用、そして見習い制度や採用プログラムの導入など、様々な対策を講じています。 AIやVRを活用したトレーニングプログラムを開発し、従業員のスキルアップを支援することで、人材不足を解消しています。
キャピタル・プロジェクトの中でも、特に日本の不動産セクターは岐路に立っていると言えます。既存の建物の多くは老朽化し、最新の安全機能やエネルギー効率が不足しています。 また、従来型の商業施設ではテナントの獲得が困難になり、空室率の増加とともに財政的な圧力が生じています。
さらに、伝統的なビジネス慣行と新技術の採用に対する抵抗が進展を妨げ、不十分なインフラと熟練したIT専門家の不足も障壁になっています。また、不動産セクターにおける厳しい規制がイノベーションを抑制しているともいえます。
しかし、これらの課題は、業界横並びで抱えている課題でもあり、逆にいえば先手を切って破壊的なイノベーションを実現する機会でもあります。大胆なデジタル技術活用や、既存資産の新たな活性化、オペレーション最適化などによって、新しい価値創造を実現できます。
また、企業が保有する不動産管理の精緻化を進めることにより、ファシリティーマネジメントの領域からアセットマネジメントへの転換によりより良質なBS/PLに磨いていくことも重要なテーマだと考えており、当社でもこの領域のご相談への対応が増えてきています。
これからは、データドリブンでの経営判断・管理がより求められている中で、情報の非対称性の高い商慣習が段階的に緩和されていくことが、不動産業界の潜在能力を高めることにつながるはずなので、ベンチャー企業を含めた不動産TECHの一層の飛躍、影響力を高めることが重要と認識しております
私の所属するインダストリーX本部でも、Mujin株式会社との合弁会社「Accenture Alfa Automation」を通じて、Physical AIなどの先端技術を活用しながら、企業の全社的変革をご支援しています。