では、一体何が起きたというのでしょうか?今の状況は複雑な生命が地上に出現した、大昔のカンブリア爆発にたとえることができます。カンブリア爆発は、複数の環境要因が偶然集中した結果、複雑な種の急激な進化(進化の時間枠で見た場合)が起きたものだと考えられています。
現在のプラットフォームの世界でも、同じような爆発的進化が起きつつあります。たとえば、スコットランドの郵便配達員が舟歌を歌う動画は、世界中のオーディエンスを引き付けました。また、アメリカ人男性がスケートボードで滑走しながらフリートウッド・マックの曲に合わせて口パクで歌う動画はネット上で大流行し、男性が得た知名度はキャリアにもプラスの影響を及ぼしました。中には政治家が「アテンション(注目/関心)」の獲得に成功している例もあり、米下院議員のAlexandria Ocasio-Cortez’s氏はTwitch投票を呼びかける動画を配信し、43万人の同時視聴者数を記録しました5.
ユーザー生成コンテンツは、インターネットと同時期に誕生しました。しかしながら、現在のようなクリエイティビティやバイラリティ、エンゲージメントの爆発により、状況はまったく新しい段階に達したと言えます。私たちが先ごろ世界経済フォーラム(WEF)と実施したメディア業界の未来に関する調査では、コンテンツ生成の大衆化がトレンドとして浮かび上がってきました。つまり、「コンシューマクリエイター」と呼ぶべき新しい層が生まれつつあるのです。
コンシューマクリエイターは、創造性とバイラリティを組み合わせて数百万規模の世界中のオーディエンスにリーチしています。たとえば、英国の放送局ITVは、ユーザーが作成した人気CMのリメイクバージョンを放映し、オリジナル版よりも大きなブランドインパクトを生み出しました。YouTubeでは今や5,300万人以上の登録者数を誇るミスター・ビースト(MrBeast)が、リアルタイムで1から10万まで数を数える動画がバイラルになったのがアテンション獲得の最初の例です。ミスター・ビーストは現在、10万ドルのアイスクリームを食べる動画など、予算をかけたバイラル動画を配信しています。さまざまなコンテンツクリエーターに直接アクセスできる新たなプラットフォームが生まれた結果、プロフェッショナルとアマチュアの境界線は曖昧になりつつあります。そしてクリエーターの成否は、その人のキャリアではなく、エンゲージメントの能力によって決まるのです。