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調査レポート

米国データセンターへの電力供給の未来

10分(読了目安時間)

2025/03/06

概略

  • データセンター市場の驚異的な成長はエネルギー環境を再構築し、それによって電力事業者は需要への対応というプレッシャーにさらされています。

  • 増加する需要に対応するには、再生可能エネルギーだけでは不十分であり、原子力や天然ガスといった他のエネルギー供給オプションも組み合わせる必要があります。

  • 電力事業者は、潜在的なインフラのボトルネックを克服し、将来に向けてテクノロジーを強化して、自らの成長を加速させるために、短・中・長期にわたる一連の新たな対策を講じる必要があります。

データセンターのエネルギー需要に対応

データセンター市場は近年急速な成長を遂げており、今後さらに拡大する見込みです。生成AIやテクノロジーの進歩に牽引され、この成長は電力事業者に対し、データセンターへの信頼性と安定性を兼ね備えた電力供給という多大なプレッシャーを与えています。そして、再生可能エネルギーが優先的に選択される一方で、それだけでは増大する電力需要を満たすことができません。これに対応するため、顧客は現在、従来のデータセンター電力源に代わる選択肢を模索しています。

要約:大きな変化が目前に迫っており、今こそ進化するときです。

前例のない成長と予測不能な課題

AIとクラウドの急速な普及と消費者データサービスの増加、およびコンピューティング技術の進化が、電力需要の急増を牽引する要因の一部となっています。

16~23%

米国における電力の16-23%が、2033年までにデータセンターだけで消費される可能性があります。1​

2023年だけで米国のデータセンターは176TWhの電力を消費し、2030年までに413〜509TWhに増加する可能性があります。2 消費量の急増は、データセンターが主に高度なAIに対応するためのもので、それは電力需要の急増分の約70%を占め、うち生成AIが2030年までに約40%を占める可能性があります。3​

ボトルネックとビジネスのバランス

データセンターは様々な利点を兼ね備えた場所に設置されます。経済的インセンティブから土地の利用可能性、信頼性の高いユーティリティの相互接続、また堅牢なファイバー接続まで、データセンター運営者は立地の選定にあたって、可能な限り多くの好条件を求めます。しかしながら、データセンターの地理的な偏在により、過剰になっている地域や十分に活用されていない地域があります。

80%

2023年の米国データセンターにおける電力消費量の80%が15州に集中していました。4

電力事業者は、全国的な公平なエネルギー分配を確保しつつ、地域ごとの急増する需要に対応するために、地域に合わせた電力網の強化を含めて、それぞれの地域に適した戦略を採用する必要があります。

2023~2030年の米国主要送電地域全般のデータセンター予測成長率を示す横向き棒グラフ画像。
2023~2030年の米国主要送電地域全般のデータセンター予測成長率を示す横向き棒グラフ画像。

風力や太陽光などの再生可能エネルギーの長期的なサステナビリティ目標の中心にありますが、それらは断続するものであり、データセンターのように大量の需要を伴う運用を完全にサポートするには高度な エネルギーストレージが必要です。天然ガスや原子力エネルギーは、地熱やバイオエネルギーなどの他の選択肢とともに、安定的でクリーンなエネルギー供給の確保に有効です。化石燃料は、今後数年間で拡大する需要増加のギャップを埋める必要があります。

将来のトレンドと見通し

アクセンチュアが複数の成長シナリオをボトムアップ分析した結果、最も低い成長シナリオでも、効率の向上だけではデータセンターによる急増するエネルギー需要に対応できないことがわかりました。複数の予測不可能な要因が需要に影響を与えます。

  • 暗号通貨マイニングに加えて、AI、エッジ、量子コンピューティングに対するデータ処理のニーズはますます高まっています

  • 規制の厳格化、再生可能エネルギーへの直接投資などの要因による、サステナビリティへの懸念が需要を牽引しています。

  • 地政学的緊張と資源の不足によってもたらされるサプライチェーンの混乱は、データセンターの成長にとって逆風になる可能性があります。

  • 需要側と供給側の両方でテクノロジーの進化は続き、将来のテクノロジープラットフォームには、事業者が必要に応じて異なるエネルギー源を切り替えられる機能が必要になります。

  • インフラ構築、運用、サステナビリティにおける世界的人材不足は、本分野の成長を遅らせる可能性があります。

アクセンチュアの提言:戦術と計画

今こそ行動するときです。アクセンチュアの短期・中期・長期的な提言を戦術として活用することで、電力事業者は直面する課題に対処できます。

短期的提言

電力事業者は以下から始めることによって、直面する課題に対処できます。

AIと機械学習を活用し、リアルタイムの自動負荷最適化、エネルギー需要予測、またパーソナライズされた応答を使用することで、デマンドレスポンスを強化します。

ハイパースケーラーと連携して、電力事業者の長期計画の取り組みを理解できるように支援します。電力、ファイバー、水、冷却などのインフラ機能とリソース、および再生可能エネルギー統合の可能性がある場所を特定します。

データセンターを電力網に接続するプロセスを簡素化することで相互接続時間を改善し、連携することによって調整の機会を増加させ、持続可能なプラクティスを促す経済的インセンティブを通じて経済戦略を強化します。

中期的提言

以下は開発に時間がかかりますが、需要の増加への対応には不可欠です。

既存の発電所を最適化し、クリーンなエネルギーソリューションに多角化し、再生可能エネルギーとストレージへの投資を増加させ、将来の需要に対して安定した供給とモジュール式でスケーラブルなキャパシティを確保します。

現在のインフラを最適化し、スマートテクノロジーによる最新化を加速し、より大きなエネルギー負荷を支え、ボトルネックを防ぐための包括的なアップグレードに資本支出を割り当てることで、電力網のキャパシティとレジリエンスを強化します。

成長性が低い状況ではオーダーメイドの付加価値サービスを提供し、需要が増加するにつれてカスタマイズされたグリーンエネルギーソリューションを拡大し、成長性が高い状況ではリアルタイムのエネルギー管理ソリューションを実装して、信頼性の高いオンデマンド電力を提供します。

プロセスを合理化して遅延を減らし、地方自治体やステークホルダーとのパートナーシップを強化し、再生可能エネルギー、エネルギー効率、持続可能なインフラを促進するための財政的インセンティブを拡大します。

リソース不足の地域に対する長期的な提言

以下の長期的な提言は、高いエネルギー需要により深刻なキャパシティの制約に直面しているリソース不足の地域に適用されます。​

高度なプラットフォームと配電インフラを組み込み、グリッドの柔軟性を高め、有線以外の代替手段を統合します。また、AI需要予測と電力網テクノロジーを使用することで、リソース配分を最適化し、信頼性を向上させ、需要を満たします。

アジャイルで段階的な投資アプローチを通じて、再生可能エネルギーとSMRのような拡張可能なソリューションを組み込みながら、データセンターが主要因の電力需要の増加、技術的なディラプション、規制上の課題を考慮します。

価格設定をカスタマイズし長期契約を提供することによって、公平なコスト配分を保証し、データセンター以外の顧客の料金引き上げを防止し、データセンター事業者と再生可能エネルギーに共同投資することによって財務的持続可能性を強化します。

予防的なインフラ計画、電力事業者、データセンターおよび規制機関とのコラボレーション、また長期的な投資を誘致し、持続可能な成長を促進するための永続的な経済インセンティブの提唱に焦点を当てます。

未開拓地域に対する長期的提言

データセンターの存在が最小限の未開拓地域の電力事業者も、これらの追加措置を検討する必要があります。

再生可能エネルギーが完全なゼロエミッションの電力を達成するまで、天然ガスなどの信頼性の高いエネルギー供給を提供する機会を模索し、データセンターの予測可能な運用コストを確保するために、安定した料金設計と24時間365日のレジリエントなサービスを強化します。

手頃な土地、低いFEMAリスク指数、主要なネットワーク相互接続点への近接性、冷水源など、サービス地域の地理的優位性を訴求し、運用に最適な立地を求めるデータセンターを誘致します。

データセンターや高消費顧客とのパートナーシップの機会を評価します。冗長電源、最先端の送電設備、ミドルマイルデータとファイバー接続を備えた信頼性の高い電力網の開発を共同で進めます。

今後の展望

電力事業者は、データセンターの潜在的な成長性と電力需要への大きな影響について、より深いインサイトを得る必要があります。高度な 分析および予測ツールを活用して、データに基づくインサイトを得ることで 、将来の電力需要を予測し、潜在的なボトルネックを特定することによって、積極的な計画とコスト効率の高いソリューションを実現できます。これらのツールやサービスと、強固なステークホルダーとのコラボレーションを組み合わせることで、持続可能でレジリエントなインフラ の開発を加速させることができます。これにより、増え続けるデータセンターの電力ニーズを確実に満たすとともに、電力事業者の成長も保証されます。

出典:

1 アクセンチュア分析

2 アクセンチュアリサーチのモデリング

3 Dmytro Konovalov, “Global Market Scan: Data centers in the age of AI, a global investment surge” Daily Commercial News, December 24, 2024: D1, Factiva, Inc. All Rights Reserved.

4 Powering Intelligence: Analyzing Artificial Intelligence and Data Center Energy Consumption, EPRI, 24 May 2024, as reported in “Study estimates datacenters could take 9% of US power production by 2030”, Market Intelligence News, 29 May 2024: D1, Factiva, Inc. All Rights Reserved.

筆者

Vivek Chidambaram

Senior Managing Director – Resources Global Lead, Accenture Strategy

Scott Tinkler

Senior Managing Director – Utilities Global Sector Lead

Jim Mazurek

Managing Director – Utilities US Lead, Accenture Strategy

Michael Higgins

Principal Director – Utilities, Accenture Strategy

Lasse Kari

Principal Director – Resources Lead, Accenture Research