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調査レポート

2025年銀行業界のトレンドトップ10

急速に変化する時代の中で、私たちが見据えるのは2025年のその先、2030年の銀行の姿です。

5分(読了目安時間)

2025/01/08

概略

  • 過去四半世紀にわたるデジタル化は、銀行業務の効率性を大きく向上させてきました。しかし同時に、顧客との距離が広がり、本来のつながりが希薄になりました。

  • 今、AIが、新たな時代の扉を開こうとしています。テクノロジーの進化により、銀行は「信頼される金融アドバイザー」としての本来の役割を取り戻し、顧客一人ひとりに最適な提案と体験を通じて、関係性を再構築するチャンスを手にしています。

  • これからの銀行に必要なのは、「なぜ出来ないか」ではなく、「どう実現するか」という視点への転換だと考えます。その鍵を握るのは、過去に培った強みをいかに活かし、現在のテクノロジーと融合させていくかという視点です。
01

テクノロジーで銀行サービスをすべての人に届ける

生成AIは、顧客一人ひとりのニーズに寄り添った次世代の金融サービスを可能にし、すべての人に金融サービスを届ける新たな時代を切り拓こうとしています。

2030年には、デジタルとAIの浸透により、銀行サービスはよりパーソナルで、誰もがアクセスしやすいものへと進化します。銀行は、個人や企業を問わず、より多様なニーズに応える包括的かつ予測的なサービスを提供できるようになります。

02

リスク回避が、新たなリスクを生み出す

規制圧力の高まりを受け、住宅ローンや事業融資の顧客が、銀行以外の金融業界へと流れ始めています。この流れは、銀行の存在意義と競争優位の再定義を迫る、構造的な変化になりつつあります。

2030年には、金融サービスの中心的な担い手が、もはや「銀行」とは限らない時代が訪れます。こうした変化に対応するためには、銀行はテクノロジーを起点に、新たなパートナーシップやビジネスモデル変革を通じて、競争力を再構築していく必要があります。

03

スケールの差が、競争の本質を変える

大手の金融業界とそれ以外の金融業界との間で、テクノロジー投資、サービス展開力、データ活用といったあらゆる領域において格差が拡大しています。今や「スケール(規模)」は、戦略的優位性を生む決定的な要素となりつつあります。

2030年に向けて、このスケールを武器にした勝者の構図はより明確になると考えます。大手の金融業界は、圧倒的なコスト効率、先進テクノロジーへのアクセス、グローバルネットワークを駆使して、金融業界の構造そのものを塗り替えていくのです。スケールをどう活かすかが成否を分ける鍵となるのです。

04

顧客体験は原点回帰で進化する

生成AIの進化により、画一的で無機質だったデジタル体験が大きく変わりつつあります。

顧客一人ひとりの状況やニーズに応じて対応できる、かつてのような対話的で温かみのある接点が、デジタル上でも再現され始めているのです。

2030年には、銀行は顧客ごとの行動や状況を深く理解し、関係性を育む超パーソナライズ体験を提供する存在へと進化していると考えます。

05

金融サービス戦略は、“分断”から“統合”へ

従来の「商品単位」や「部門単位」で構成されていた提供モデルから脱却し、生成AIの力を活かして、顧客の視点を軸に据えた統合的なサービス体制への進化が求められています。

2030年には、顧客自身が目的に応じて、商品・価格・アドバイスを自在に組み合わせ、最適な金融体験を自ら設計できるようになります。金融サービスは、より個々のニーズに寄り添い、価値のあるものへと進化していきます。

06

人とAIの新しい働き方が始まる

生成AIは、業務の効率化にとどまらず、顧客体験の向上や役割の再定義を通じて、銀行業界の働き方を根本的に変革しています。これにより、継続的な変化と人間+マシンの協働の新しい時代が到来しています

2030年には、生成AIが銀行業務のあらゆる業務に深く浸透し、定型業務の自動化と、人とAIのシームレスな協働が実現された状態が新たな業務スタンダードとして定着します。

07

非効率の解消から本質的価値の創出へ

生成AIは、煩雑で非効率な業務を自動化し、今後2〜3年で最大60%のコスト削減が期待されています。一方で、対顧客業務に携わる人材が、本来注力すべき高付加価値業務に集中できるようになることで、満足度や成果が一層高まります。

2030年、生成AIは金融業界の成長戦略を支える中核的なツールとなり、コスト効率の向上だけでなく、売上成長の原動力としても不可欠な存在になります。

08

共通の技術基盤が、金融インフラの新たな標準となる

銀行業界では今、特定のベンダーや自社開発に依存した旧来のシステムから脱却し、柔軟性と拡張性に優れた共通の技術基盤への転換が進んでいます。Linuxをはじめとするオープン技術の活用により、効率性やセキュリティを確保しながら、スピーディかつ柔軟なサービス展開が実現します。

2030年には、この共通基盤が業界全体の標準となり、銀行は自社の戦略や顧客ニーズに応じて、システムを自在に構築・連携できる体制を手にします。結果として、より強固で持続可能な金融エコシステムが形成されていきます。

09

複雑なシステムは過去のものに

多くの銀行が抱える複雑なレガシーコード(過去のシステム資産)は、変革の足かせとなっています。生成AIは、こうした複雑なシステム構造を読み解き、自動的に現代的なコードへと書き換えることで、開発の生産性を大きく高めます。

2030年には、銀行におけるアプリケーション開発の大半が生成AIを前提としたものになり、多くの金融業界が老朽化したコアシステムから、安全かつ計画的に移行を進めています。技術的負債を解消し、金融業界は、変化にしなやかに対応できる次世代型テクノロジー基盤へと進化していきます。

10

プラットフォームベンダーにも変革が求められる

生成AIの進化により、SaaSやバンキングプラットフォームベンダーにも高度な革新力が求められています。特に近年では、必要な機能を柔軟に組み合わせられる「コンポーザブル・アーキテクチャ」への移行が進んでいます。

2030年には、ほぼすべての銀行向けソリューションにAIの統合が標準となり、プラットフォームベンダーは、AIを活用した高度なサービスと顧客体験を当たり前のように提供するようになります。業界全体は、組み合わせ可能な金融サービスの仕組みと共通のサービス市場へと移行し、金融業界は、より柔軟で、独自性のあるサービス設計が可能になります。

探求心を持ち続ける, 続きを読む

銀行業界はいま、データ、AI、そしてデジタルによって再構築されつつあります。かつてないスピードで変革が進む一方で、こうした「デジタル化」は、顧客との間にあった人間味や共感に基づく関係性を徐々に希薄にしてきました。

 

このジレンマに、私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。答えのひとつは、テクノロジーそのものにあります。AIやクラウドをはじめとするテクノロジーを活用し、銀行が本来持っていた“人と人とのつながり”を、再び取り戻すこと。それが、これからの金融業界に求められる使命です。レポート全文を読む(英語)

2030年の銀行へ 未来を見据えた変革の一歩

この四半世紀、銀行業界は「デジタル時代」に突入し、顧客利便性と業務効率を飛躍的に高める革新的な進化を遂げてきました。しかし同時に、この変革は、かつて顧客が大切にしていたパーソナルで共感に基づく関係性を失わせる結果にもつながりました。

今、私たちは次なる転換点に立っています。この先の成功の鍵は、「探求心」を持ち、AI、データ、クラウドといったテクノロジーを活用して、そうした人間的なつながりを取り戻すことにあります。2030年の銀行には、デジタルの効率性と顧客中心の共感力を両立させることが求められます。そのためには、新たなマインドセットを持ち、継続的に変革し続けることが、組織の競争力を左右する時代に入ったといえるでしょう。

デジタルとAIの進化が融合する今こそ、銀かつてのような温かみのある、意味のある顧客体験を再び創出することができるのです。今こそ、未来を見据えながら、銀行業務の「原点」に立ち返るときです。

Michael Abbott / Global Banking Lead, Accenture

筆者

Michael Abbott

Senior Managing Director – Global Banking & Capital Markets Lead