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知見

AIデータセンター開発を加速するための新しいプレイブック

5分(読了目安時間)

2026/06/29

概略

  • AI活用の拡大に伴い、電力需要は既存の送電網では対応が難しいほど急増しています。

  • いまや電力の確保は、データセンター開発のスピードを左右する最大の要因です。そのため、電力を起点とした計画的なアプローチが求められています。

  • 地域社会との連携を戦略の中核に据えることで、許認可手続きの迅速化や建設リスクの低減に加え、プロジェクトを円滑かつ継続的に推進するための信頼関係を構築できます。

従来の電力インフラではデータセンター需要の拡大に対応できない

データセンターの電力需要は急速に拡大している一方で、送電網や関連設備のサプライチェーン、さらには電力会社の計画・整備プロセスがそのスピードに追いついていません。AIの普及に伴いデータセンター開発は加速しており、地域ごとに大規模な電力需要が新たに発生しています。

一方で、チップやサーバーの増設とは異なり、電力供給は単純に投資を増やせば迅速に拡大できるものではありません。電力供給は、送電線や変電所、発電所といった物理インフラに加え、各種許認可や電力系統全体の計画・調整に支えられています。そのため、多額の投資を行ったとしても、数年単位に及ぶ系統連系の待機期間を短縮したり、送電網の増強を不要にしたりすることは困難です。

現在、系統連系の申請件数は過去のピーク需要を大きく上回っており、プロジェクトのスケジュールも長期化しています。AI向けワークロードの増加に伴い、コンピューティング需要と電力供給能力のギャップはさらに拡大し、成長を制約する要因となっています。その一方で、多くの市場ではピーク時以外に送電網容量の余力が存在しており、電力活用の最適化や柔軟な運用による新たな機会も生まれています。

従来のデータセンター戦略が見直されている理由

これまでデータセンター開発では、電力の確保は用地選定後に対応すべき課題と考えられてきました。しかし、AI需要の急拡大によって、この従来のアプローチは限界を迎えています。事業者による電力容量の確保競争は激しさを増しており、すでに逼迫している電力インフラへの負荷をさらに高めています。

今では、電力こそが、どの用地が開発に適しているか、どれだけ早く立ち上げられるか、そしてどの程度の収益が見込めるかを決定づける重要な要因となっています。

電力使用効率の向上は引き続き重要ですが、それだけではデータセンターの価値を十分に測ることはできません。電力供給が制約となる環境では、確保した電力をどれだけ効率的にコンピューティング能力へ転換できるか、また限られた電力をいかに有効活用できるかが重要な競争力となります。

今後は、計画力や運用の柔軟性、関係者との連携を強化しながら、電力を確保しやすく、地域社会にも価値をもたらすプロジェクトが優先されるでしょう。

データセンター開発を変革する主な要因

10億ドル以上

100メガワット規模のAIデータセンターの稼働が1年遅れた場合に、実現が先送りされる収益

50~60%

データセンターに確保された電力容量のうち、従来型の設計では有効活用されない電力の割合

1~3倍以上

米国の主要市場において、現在の系統連系の申請容量が過去のピーク需要を上回る倍率

30~70%

施設内のガス発電で送電網レベルの信頼性を確保するために、追加で必要となる発電容量

競争優位性を左右する電力供給のスピード

AI市場では、わずかな遅れが大きな機会損失につながります。大規模なデータセンターへの電力供給が1年遅れた場合、10億米ドルを超えるAI関連の収益機会が先送りされる可能性があります。その間にも、競合他社はAIモデルの学習やサービス展開、データの蓄積を進めていきます。コロケーション事業者にとっても、開発の遅延は連鎖的な影響をもたらします。資金調達の遅れやテナントの獲得機会の損失につながるだけでなく、資産価値や事業運営の柔軟性を低下させる要因にもなります。

現在、電力供給の実現には、電力会社、地域社会、事業者をはじめとする多様な関係者との連携が不可欠です。プロジェクトを円滑に推進するためには、不確実性を低減し、ステークホルダー間の調整を早期に進めるとともに、計画段階から柔軟性を組み込むことが重要です。

先手を打つための4つの取り組み

成功の鍵は、現在確保できる電力を把握・最適化するとともに、将来的に必要となる電力を確保するための計画を早期に策定することです。これらの取り組みを建設着工前の段階から進めることで、プロジェクトの成果を最大化できます。

01

電力供給を見据えた用地選定

迅速な電力確保は、最短で電力供給を受けられる用地を選定することから始まります。多くの場合、ブラウンフィールド用地や既存の系統連系設備、発電設備の近隣など、既存インフラを活用できる立地が有力な選択肢となります。

また、用地取得や設計を確定する前に、電力供給の状況や許認可の見通し、必要となる設備増強の内容を評価しておくことが重要です。

大規模な開発プロジェクトでは、立地条件や稼働開始時期に応じて、送電網からの供給に加え、敷地内発電や長期的な電力調達手段を組み合わせた柔軟な電力戦略が求められます。

02

地域社会の支持を得る

地域社会との連携は、プロジェクトの成功を左右する重要な要素です。早い段階から地域社会と対話を重ね、透明性の高いコミュニケーションと着実な取り組みを示すことで、関係者からの理解や協力を得やすくなります。地域社会にとっての価値が明確であれば、開発への支持も得やすくなり、プロジェクトを円滑に推進できる可能性が高まります。

03

設計に柔軟性を組み込む

電力供給が制約となる市場では、確保した電力を最大限に活用し、限られた電力からより多くのコンピューティング能力を引き出せる設計が求められます。開発者は、IT機器と冷却システム全体で電力を確保したり、進化を続けるチップや冷却アーキテクチャに合わせて設計したり、重要性の低いコンピューティングをシフトまたはスロットルするワークロードオーケストレーションを使用したりするなどの選択肢を通じて、データセンターをより柔軟に設計することで、需要を適正な規模に調整し、より負荷に対応しやすくすることができます。

04

電力会社と連携し、容量計画を進める

電力会社は、急速に増加する需要への対応にあたり、供給の信頼性やコスト、電力系統の制約のバランスを取りながら計画を進めています。事業者は、段階的な負荷増加の計画を共有し、想定される需要を明確化するとともに、共同投資や柔軟な運用方針を提案することで、より効率的な計画立案や迅速な対応を促すことができます。

こうした取り組みによって、系統連系は単に電力容量を確保するための手続きではなく、大規模な電力需要を円滑に統合し、電力供給を加速するための協働プロセスへと進化します。

電力競争を勝ち抜くデータセンター

次世代のデータセンター開発において重要なのは、最大限の電力容量を確保することではありません。信頼できる計画、柔軟な設計、電力会社や地域社会との緊密な連携により、どのプロジェクトが限られた電力を最も効果的に活用できるかによって決まります。

送電網の増強には長い期間を要し、AI向けワークロードも今後さらに拡大していくと見込まれます。そのため事業者には、単に大きな電力容量を求める従来の発想から脱却し、電力を起点とした戦略的な開発プロセスへ移行することが求められます。

これからの競争を制するのは、電力を確保しやすく、地域や電力システムにも価値をもたらすデータセンターです。

筆者

Neeraj D. Vadhan

Senior Managing Director – Supply Chain and Engineering, Accenture Data Center Services Lead

David Quirk

President and CEO – DLB Associates

Bethany Patton

Managing Director – Industry & Enterprise, Utilities

James Hebblethwaite

Managing Director – Industry and Enterprise, Software & Platforms

Caroline Larose

Senior Manager – Supply Chain & Engineering

Paul Johnson

Senior Principal – Accenture Research