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調査レポート

人間、AI、ロボット:

仕事と労働力を再創造する経済学

5分(読了目安時間)

2025/03/17

概略

  • 経営陣はAIを活用して、変革をもたらす成長とイノベーションを推進し、個人、経済、組織、社会の未来を再構築することができます。
  • アクセンチュアとウォートン・スクールは、経営陣が責任と目的を持ってエージェンティックな時代(AIによる自律的な意思決定が可能になる時代)を切り開くための指針となる調査イニシアチブを開始しています。
  • 目的、共感、集中によりAI変革を進めるリーダーは、財務目標を上回るだけでなく、人間のパフォーマンスを向上させることができます。

AIテクノロジーの急速な普及は、業界のリーダーにとって、効率性を高めるだけでなく個人、経済、組織、社会的な価値のまったく新しいパラダイムを解き放つユニークな機会になっています。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールとアクセンチュアは、これらのリーダーがそのインパクトを大規模に達成する理由とその方法について理解を深める支援をするために、グローバルな調査イニシアチブを開始しています。私たちの焦点:生成AIを活用したエージェントやロボットに人間の強みを深く統合することで形作られる未来が、どのように業界全体の仕事を根本的に再定義し得るかを理解することです。私たちの目標:経営陣が受け身の参加者としてではなく、新しい経済や組織の現実を描く設計者としてこの変革を構築することができるように、強力なファクトベースと行動指向の知見を提供することです。

ウォートン・スクールとアクセンチュアの最新の調査結果から得られた初期の仮説とインサイトは、責任と目的を持ってエージェンティックな時代を切り開くことを目指す経営陣や政策策定者に、出発点と予備的なロードマップを提供します。

個人

人間とAIの協働における「実現可能な技術」は急速に進化しています。組織には、人間のインサイトとAIの精度、ロボットの効率を統合することで、インテリジェンスを増幅させ、能力を調整する機会が訪れています。この統合には、特にAIによる対応が適している課題、人間の専門知識が力を発揮する分野、そして目的を持って両者が協調的な融合することによって最も恩恵が得られる状況を明らかにすることが必要です。また、個々が準備を整えてそれぞれのエージェントチームやロボットチームを率い、将来に向けて装備を整え、これらの要素の進化に伴ってこの知識を企業全体に継続的に適用する必要もあります。

経済

労働の経済と労働力は、生成AIを活用したデジタルエージェントやロボットエージェントの普及に伴って変化します。このダイナミクスを適切に管理するために、経営陣はまず、労働力を構成する各要素、すなわち個人、運用チーム、部門、従属部門、さらにバリューチェーン全体に及ぶ経済的インパクトを理解する必要があります。次に、これらのインパクトが、収益性、資産効率、投資資本利益率(ROIC)など、企業の財務諸表に与える全体的な影響を予測し、最適化する必要があります。価値とコストのバランスをとり、同時に仕事でのヒューマンエクスペリエンスを重視する経営幹部の能力が、業績と利益において他社を大きく引き離す企業を生み出します。

組織

企業が「変革の力」、すなわち、人間の創意工夫やAIとロボットのケイパビリティを最大限に引き出す能力を開発するためには、経営陣が継続的な変化を構築する原動力となり、新たな方法でリーダーシップを発揮し、企業が常に未来に対応できることを確約する必要があります。これには、人材に対する新たなアプローチが求められ、予測的な人員計画を取り入れるとともに、固定されたスキルセットよりも適応性を優先し、個人に合わせたAIドリブンの学習を導入する必要があります。また、人間とAIの貢献のバランスを継続的にテストし、改善していく必要があります。組織が成功するためには従業員からの信頼が必要であり、リーダーは従業員のイノベーションと成長を支えながら、従業員が好きな仕事に取り組める環境を作らなければなりません。

社会

産業革命をはじめとするテクノロジーの大きな変化と同様に、この新たな変革は社会に大きなインパクトをもたらします。スキルと労働力に関して予想される不均衡、教育や企業研修の改革の必要性、地理的・地政学的影響、人間の尊厳と自律性、社会経済的格差、差別、偏見などについて、すでに疑問が生じています。これらの課題は、コーポレートガバナンスの方針と基準(業界内および業界間の両方)、政府の規制(業界間および国家間)、人間の労働力を仕事の新たなアプローチに適応させるために必要なプロセスと実践(教育システムや企業研修全体)、そして(これらテクノロジーの大規模な使用を目指す)責任ある倫理的規則と指針という、4つの主要な分野にわたる調整の必要性を際立たせています。企業、政府、機関のリーダーが意図と目的を持って協力すれば、仕事の変革は社会全体に大きな利益をもたらすことができます。

アクセンチュアはこの新しい調査を通じて、人間、自律型エージェント、ロボットを組み合わせた労働力の経済性について理解を深め、この新しい労働力の展開に合わせて個人、機能、バリューチェーンレベルで仕事を改革する方法を見出すことを目指しています。

私たちは、人間の創造力、共感力、判断力と、デジタルエージェントやロボットの精度と規模をエージェントチーム内で効果的に組み合わせる方法を明らかにしようとしています。そうすることで、将来最も成功している企業が、どのように労働力経済の特性を再定義し、新たなレベルのパフォーマンスを達成するのかを示したいと考えているのです。こうした企業は、持続可能な経済的優位性を確保するには、効率だけでなく、新たな価値の戦略的創出も必要であることを認識し、絶え間ない変化にも十分に備えることができる企業です。さらに、財政的な責任と、人間の幸福と目的意識を重視することへのコミットメントの間でバランスをとることができます。

成功は、変化に対応することではなく、戦略的に、思慮深く、共有価値に常に重点を置いて、変化を設計することにかかっています。ご自身の組織がこの重要な取り組みに貢献できるとお考えの場合は、筆者までご連絡ください。

筆者

James Crowley

Global Products Industry Practices Chair

Karalee Close

Lead – Talent & Organization, Global

Kenneth Munie

Senior Managing Director – Global Products Strategy Lead, Accenture Strategy

Silvia Hernandez

Managing Director, Talent & Organization – Global Products Lead

Selen Karaca-Griffin

Principal Director – Accenture Research, Products and Life Sciences

福村 直哉

ビジネス コンサルティング本部 コンサルティンググループ マネジング・ディレクター