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僕らのお金をリ・デザインする〜みんなの銀行誕生秘話~
2022/12/13
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2022/12/13
こんにちは。アクセンチュア ソングのYukiです。
アクセンチュア ソングでは、デザインやDX、サステナビリティ、カーボンニュートラル、メタバースなどビジネスで話題のテーマをピックアップして、専門家やデザイナーとともに議論しながら理解を深めるトーク番組「exe」をPodcastで定期的に配信しています。今回のブログでは、以前Podcastで配信した「僕らのお金をリ・デザインする〜みんなの銀行誕生秘話~」の回をご紹介したいと思います。
「みんなの銀行」はデジタルネイティブ世代(Z世代・Y世代)をターゲットとした、全ての金融サービスをスマートフォン完結で利用できる、日本初のデジタル銀行です。アクセンチュアでは金融サービスをゼロから再設計・再定義し、モダンなデザインプロセスとシステムアーキテクチャを採用することで新しい金融サービス体験を提供するご支援をさせていただきました。
今回はデジタル庁のCDO(Chief Design Officer)(※収録当時。22年4月よりデジタル庁デジタル監に就任)の浅沼さん、株式会社ギフティでChief Creative Officerを務める長谷川さんのお二人をゲストにお招きして、アクセンチュア ソングのデザイナーTaehanとともに収録したPodcastの一部を紹介します。
銀行という特に歴史のある業界において、デザインの側面から切り込み、2021 年度のグッドデザイン賞、世界三大デザイン賞の一つといわれるレッドドットデザインアワード「ブランドオブ・ザ・イヤー」、「ベストオブザ・ベスト」、ブランドデザイン&アイデンティティのレッドドットの3部門を受賞したスマートフォンアプリ「みんなの銀行」をリリース──その裏には、どんな人たちのどのような工夫や苦労があったのでしょうか。
はじめに
― 本日はよろしくお願いします。
浅沼 今日は、金融のコアな話から、幅広く、今後の未来のデザインをどうしていくのか、のような話まで多岐に渡って、皆さんと話せるのを非常に楽しみにしてます。僕は最初、家電のデザインをしていて、時代の流れとともに「UXが大事だよね」となって、デジタルのデザインにも携わるようになりました。
長谷川 僕も浅沼さんも、電気屋さんの出身ですよね。あの頃、インターフェースというのは、そのあたりの領域しかなかったですよね。
浅沼 そもそも長谷川さんと同じで、やはり僕が当時デザイナーとして憧れるとしたら日本のメーカーで、世界でナンバーワンみたいな印象が強かったです。だいぶ今とは違いますよね。その当時の日本のメーカーに入るのはすごく難しくて。かつ優秀な人が非常に沢山いたので、今思うとキャリアを考える時の、最初のステップとしては非常に僕としてはありがたかったです。
長谷川 そんな皆さんと、今回は「僕らのお金をリデザインする〜みんなの銀行誕生秘話〜」というテーマで、日本の金融業界のDX化の現状や、デザインの力で生まれた日本初のデジタル銀行の今を探っていきます。
「銀行 = ライフスタイルブランド」 化
― そもそも日本における銀行のデジタル化は世界レベルで見て遅いのでしょうか?
Taehan やはり海外と比べるとすごく遅いです。金融というものが今まではインフラとして捉えられていたので、生活者の人も従来の在り方にあえて疑問を持たない存在だったのですが、近年金融は私たちの生活のためのツールであり、自分たちが扱える・マネージできるものだと捉えられています。それに対して世界の金融機関が動き始めて、銀行の形や提供するサービスの様相を変えていくというのが今の金融業界の体験の軸から見た時の動きとしてあります。
長谷川 一生必要なとき以外絶対触らない堅い金庫みたいな銀行のイメージが、僕らの頭の中にあるじゃないですか。年に1回か2回見るか見ないかみたいな。ただ、携帯をみんな持ち歩けるようになった時点で、そこが変わってこないと駄目ですよね。
Taehan そうですね。例えばドイツ初のモバイルバンクであるN26という銀行では、ライフスタイルブランドを掲げていて、自分が手に持って上手く馴染むかといった部分をしっかり見定めてデザインにこだわっていますよね。例えば洋服やインテリアみたいに、持っていて愛したくなるようなブランドを目指している。だから一応物理的なカードもあるんですけれど、メタルカードという別のカードにして、デザイン性の高いもの、番号とかも書いてないものを作りました。そういうものを提供することでもう少し金融機能というものを道具の様に生活者に捉えてもらうことは今の潮流かなと思います。
「デジタルバンク」という新しい挑戦
― 「みんなの銀行」をどう定義していますか?
Taehan みんなの銀行は簡単に言うと、スマホで完結するデジタルバンクと言っています。全ての金融機能が全部スマホで完結する。ネットバンクと何が違うとよく言われるんですけど、ネットバンクは語弊を恐れずに言うと、店舗がないだけで、その他のプロセスや業務の全てが従来の銀行と根本的には変わっていません。それに対して僕らが定義しているデジタルバンクというのは全てゼロからデジタルで作っている。そのため裏側の、業務プロセスも全部デジタル化し、DXされているってことだと説明しています。
長谷川 デジタルバンクは全く新しい取り組みであり、ふくおかフィナンシャルグループの方々も前例のないやり方で取り組む必要があったと思うのですが、どのような期待がありましたか?
Taehan 地方銀行というのもあって、これまでローカルでのビジネスがメインになっていたところが、デジタル化した瞬間に一気にローカルからグローバル規模でのビジネスになるじゃないですか。そのビジネス範囲の拡大に対しては非常に期待がありました。僕らは、今から作る銀行は今まで見たことがない銀行であると言っていました。銀行であることは間違いないんだけど、今まで見たことがない銀行を作ろうということで、アクセンチュアとふくおかフィナンシャルグループの皆さんとで共創しようという意識で始まりました。彼らはこのプロジェクトが始動する以前から従来の銀行の職員としてキャリアを積んできた方がすごく多いので、守らなきゃいけないところはすごく熟知しているし、銀行法という法律があるので、その辺をここは駄目だよ、ここはいいよとか、そこまでいったら駄目だっていうこととかをしっかり話しながら進めました。しながら、僕らはとにかく最先端に引っ張るし、彼らは危ないところを守る、といった形で上手くコラボレーションしながら作っていきました。
思い切ったターゲット設定から得られた、意外な発見
長谷川 スマホ操作がメインとなることで、高齢者と言うよりは、若い人がメインターゲットに設定されたと思うんですが、その辺の決断もスムーズに決まりましたか?
Taehan 結構ここも面白いなと思ってるんですけど。基本、銀行の生業って、ある程度ミドルエイジ以上の人たちが資産運用等で預け入れた資産を運用することで成り立っている側面があります。ただ、これからは、一番若い世代であるデジタルネイティブ、いわゆるZ世代だったりミレニアル世代だったりとか、もう生まれながらにしてiPhoneやiPadといったデジタルデバイスに慣れ親しんでるような層に向けて作っていくべきだと考えました。2030年頃には日本の生産人口の6割以上を占めると言われているので、今のうちから数年後のメインプレーヤーを確実に押さえるんだということを、最初から意識してましたね。その点はやはり、ふくおかフィナンシャルグループの皆さんの情熱を感じたというか、もしかしたら地銀だからこその動きだったのかもしれないです。とはいえ、金融機関に、こんなに新しいことに全力を注げるイノベーティブな人たちがいるんだというのが、僕の最初の感想でしたね。
長谷川 浅沼さんも、メガバンクの中でデザイングループを率いてらっしゃったと思うんですがいかがでしょうか?
浅沼 今はアクセンチュアの動きに近い部分はあって、銀行の部門の人と一緒にどういうサービス作っていこうかやり取りしています。僕もすごいなと思ったのは、あそこまでターゲットを振り切るってやはり短期勝負ではないところの判断が必要で結構、正直難しくて。預貯金額を見たら明らかに違うので今のマーケットを見るとどうしても50代60代をターゲットに据えがちなところを、あえてZ世代に振り切っていてすごいなと思っています。
Taehan 面白い話があって、僕らが作ったみんなの銀行も速報値で見たときは、狙い通り、7割程度が20代30代、10代の子でした。ただ残りの割合で高年齢層の方々もいらっしゃるんですよ。アプリなので、様々なフィードバック・声を吸い上げているのですが、そこに高齢の方々からのネガティブな声は全くなかったんですよ。もちろん当初は、年代を気にしてターゲッティングし、尖ったUIを作っていましたが、結果実は利用者の年齢層はさほど関係ないのかもしれないと分かりました。50代60代の方のデジタルデバイスに関するリテラシーレベルも実はデータにないレベルで上がってきてんじゃないかなと思いました。
長谷川 そうですよね、多分もう50代とかって、ファミコンやってた年代とかになるはずだから、ギリギリある程度大丈夫なんですよね。
Taehan しかも僕の母も70半ばぐらいですけど、スマホ使ってるので。そう考えると、皆さんスマホを使ってたらある程度、慣れてるのかなとは思いました。(笑)
― 金融という歴史の長い業界において、デジタルネイティブに振り切ったターゲット設定でアプリ開発を行った結果、当初想定していなかった年配の方にも満足度高くお使いいただけた、まさに「みんなの銀行」となった今回の事例。私たちの想像よりも、あらゆる生活の、奥深くまでデジタルが入り込んでいることが再度確認できました。
いかがでしたでしょうか?
今回は一部のみ抜粋してご紹介しましたが、ぜひ鼎談の全容を聞いてみたい方はPodcast本編もチェックしてみてください。