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天然資源業界における生成AIの労働力への影響
アクセンチュアの「Work, Workforce, Workers」の調査結果によれば、日本の労働市場全体では平均約4割、日本の天然資源業界では約3割の労働時間が、大規模言語モデル(LLM)により自動化、または大幅に強化されるとのことです。製造プロセスにおいてAI技術の導入と活用が急速に進展している天然資源業界での生成AIの導入メリットについて解説します。
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2024/11/15
生成型人工知能(生成AI)について、日常生活やビジネスでの活用がニューノーマルと謳われて久しくなりました。経済産業省が2020年に発行した日本鉄鋼業界のDX推進についての資料[i]でもAIの活用事例について触れられています。例えば、溶鉱炉のパラメーター予測と最適化(例:高炉の炉熱予測システム)等、製造の重要なプロセスにおいてAI技術の導入と活用が急速に進展しています。
また、天然資源業界に限らず、カスタマーサービスから研究職まで、様々な職種で生成AIはその業務プロセスに影響を与えると考えられます。アクセンチュアのWork, Workforce, Workersの調査結果から、日本の労働市場全体では平均約4割、日本の天然資源業界の約3割の労働時間が大規模言語モデル(LLM)により自動化または大幅に強化される可能性があることがわかりました。
一般的に、定型的で反復的なタスクが多い業務は、大規模言語モデルによる自動化の影響を受ける可能性が大きいと考えられます。一方各業界の専門職に多い、抽象的な推論や問題解決スキルを必要とするタスクが多い職業では、LLMによる能力強化の可能性が大きいと考えられます[ii]。さらにアクセンチュアリサーチの試算によると、事務職(オペレーション)は大幅に自動化されると見込まれる一方で、日本の天然資源業界ではその就業人数の規模は小さいと考えられます。就業者数が多い天然資源業界の専門職の職種(各種運転工・技術者・管理職等)では、平均すると約13%の労働時間がLLMの自動化または強化による影響を受けると推計されます。
出所:Accenture Research (総務省統計、O*NETのデータに基づく)
また、この影響を生産性向上の視点で捉えると、日本の全業界では約7%から32%、天然資源業界では約9%から12%の労働時間の節約により、生産性が向上する見込みです。他業界に比べると影響は限定的に見えますが、約10%の生産性向上は無視できない規模です。なお、労働時間の節約は、必ずしも既存の仕事の総数を減らすわけではないと考えられます。新技術の導入により労働市場の性質が変化したり、既存の仕事の一部の置換や強化が行われたりすることで、 最終的には多くの新しい役割を創出する可能性があります[iii]。
業界のビジネスリーダーは、最新のトレンドを理解し、生成AI、なかでもLLMが仕事に直接与える影響を深く理解することが不可欠です。そして、大きく影響を受ける役割を特定し、労働者が新たな役割や働き方に移行する過程を支援する責任があります。このような支援を通じて、人材不足や再生可能エネルギーへの変換など様々な課題がある中、イノベーションの加速やコスト削減、環境への対応など、企業が競争力を維持し続けるための要素を、生成AIが強化します。ビジネスリーダーは業界内外のトレンドを常に把握し、生成AIの可能性について幅広くかつ継続的に考慮する必要があります。
本稿執筆にご協力いただいたアクセンチュアリサーチに感謝を申し上げます。
[i] 日本鉄鋼業界のDX推進に向けた取り組み (経済産業省)
[ii][iii] Jobs of Tomorrow:Large Language Models and Jobs, White Paper (World Economic Forum in collaboration with Accenture Research)