アークスグループは北海道で6社、北東北で2社、合計345店舗(2020年2月時点)を運営している食品スーパーマーケット企業です。
地域に根差した食品スーパーマーケット企業の経営統合で持続的な成長を続けているアークスの経営理念は「八ヶ岳連峰経営」。グループ8社を画一的に経営するのではなく、それぞれが特色のある経営を行うことで店舗ごとの強みを発揮し、地域ごとに異なるお客様(エンドユーザー)のニーズにお応えできる競争力の強化を目指しています。
「1つの親会社からのトップダウン方式で経営する『富士山型』ではなく、特色ある山々で構成される『八ヶ岳連峰』にちなんだこの経営スタイルは、地域ごとにニーズが異なる食品スーパーマーケット業界において、アークスが強みを活かせる手法です」と株式会社アークス 取締役執行役員 井上浩一氏は説明します。
アークスの経営における数値目標は「売上高1兆円の達成」。このチャレンジのためにアークスでは、さらなるデータ活用と全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)が不可欠だと認識していました。特に重視している「データ分析の力」を高めるうえでの同社の課題は、グループで4つの基幹システムが別々に稼働しており情報の粒度が異なること。そのため、グループ企業間での精確な情報分析が困難となっていました。
「食品スーパーマーケットは地域に根差し、お客様の生活に密着した企業です。セールや特売など、日本のスーパーマーケットはいわば『きめ細やかさ』が特徴ですので、画一的なオペレーションを良しとしない業界であるともいえます。私たちも、そうした繊細なサービスを志向し、継続してきたからこそ半世紀以上にわたってお客様のご支持をいただけてきたものと考えています。PDCAを回しながらの切磋琢磨を発展の原動力としながら、成長をさらに加速するにはDXの実現が重要だと考えていました」(井上氏)
スーパーマーケットは店舗が広範な地域に展開していることに加え、運送(物流)会社や倉庫会社、各種の取引先のシステムと連携していることが多く、自社グループのシステム統合のみを検討すればよいといった単純なものではありません。各社の考え方や業務の仕組みなども多様であるため、標準化のハードルが高いといった問題もあります。
そこでアークスでは、「基本的な業務の標準化」から着手することにしました。各社のバラバラなニーズに揃えるためのアドオン開発を増やすと、コスト増や開発期間の長期化によって、システム統合のメリットをなかなか享受できないといった問題を生んでしまいます。アクセンチュアはそうしたアークスの課題を理解し、「小さく始めて大きく育てる」アプローチを提案しました。
「食品スーパーマーケットの業務そのものの標準化を目指すトランスフォーメーションと、SAPによる基幹システムの刷新を同時に進めるというアクセンチュアの提案はとても共感できるものでした」(井上氏)。このような経緯を経て、国内の食品スーパーマーケットにおける画期的なSAP導入として、本プロジェクトは発足しました。