サーキュラー・エコノミーによるビジネスモデル転換の代表的事例といえるのが、大手タイヤメーカーのミシュラン(フランス)と、建機メーカー大手のキャタピラー(アメリカ)の実践です。
ミシュランでは運送会社向けのサービスとして、従来のタイヤを売り切るビジネスから走行距離に応じてタイヤのリース料を請求する「サービスとしてのタイヤ(Tire as a Service: TaaS)」へ転換しました。製品としてのタイヤの販売ではなく、走行距離という"成果"で料金が決定されるという新しいビジネスモデルを打ち出しました。また、タイヤのメンテナンスも提供サービスに含んでいます。ミシュランはタイヤの製造から廃棄までのバリューチェーン全体に責任を持つことで、利用済みタイヤの再生・再資源化に取り組んでいます。
このサービスは走行距離の算出やタイヤの状態検知を行うセンシングやIoT、データアナリティクスなどのデジタル技術に支えられているほか、使用済み製品の回収率を100%へと高めたことで製品の再利用率の劇的な向上と環境負荷低減を達成しています。なお、2017年時点でTaaSの契約車両は欧州だけで50万台にのぼると言われます。この事例は「製品のサービス化」の代表例として認知されています。
一方、キャタピラーは、先進的なプロセスと製品のイノベーションによって、摩耗・損傷したコンポーネントを新品同様に機能する状態へ再生させることに成功しました。これまでは使用不能とされていた製品の再利用を実現することで、同社ではコスト削減と生産性向上を両立しています。サーキュラー・エコノミーによって、キャタピラーは粗利を1.5倍に増加させ、30億ドル以上の収益獲得を実現しました。
これらの事例からも、サーキュラー・エコノミーは、まさに次なるビジネスの競争力創出と新たな収益源を企業へ提供する成長戦略であることが明らかです。アクセンチュアでは、日本企業がサーキュラー・アドバンテージを獲得するための考え方やフレームワークをはじめとする、実践のために体系化された「ツールキット」を提供しています。
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【連載】事例で学ぶ サーキュラーエコノミー
2030年に4.5兆ドルの経済効果が見込まれる領域で、どうすればビジネスを成立させることができ、持続的成長に結び付けられるのか、事例を交えながら解説。
第1回:「無駄」を「富」に変える5つの成長モデル
2030年に4.5兆ドルの経済効果
第2回:「食品ロス」「廃プラ」「紙おむつ」が抱える問題
なぜ、サーキュラーエコノミーに移行するのか
第3回:「サーキュラー素材」で資源の無駄を徹底排除
ケーススタディ:サーキュラー型のサプライチェーン
第4回:共同利用やサービス化で「利用の輪」を拡大
ケーススタディ:シェアリング・プラットフォーム、製品のサービス提供
第5回:資源循環の輪を閉じる「修理と再利用」
ケーススタディ:製品寿命の延長、回収とリサイクル
第6回: 「究極」の形を実現するポイント
真のサーキュラーエコノミー企業とは(最終回)
【2030年を見据えたイノベーションと未来を考える会―イノベーション・エグゼクティブ・ボード】
論点1:サーキュラー・エコノミーの必要
性、意義とは?
論点2:サーキュラー・エコノミーを社会的な取り組みとして展開するために必要なものとは?
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