CO2を回収・分離・貯留する技術であるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)、また分離・貯留したCO2を利用する技術であるCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は、炭素循環を前進させる画期的な手法として大きな期待がよせられています。国際エネルギー機関(IEA)は、バイオエネルギーとCCSを組み合わせたBECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)は、2030年半ばから2040年にかけてカーボンニュートラルを実現していく上では重要な施策になると予測しており、特にバイオ技術を使ったCCUSは高い注目を集めています。
たとえば英国のA社では、農作物や農業残渣を原料として発酵させることで、メタンガスを生成する取り組みを行っています。メタンガスを生成する過程では同時にCO2が発生しますが、この農業残渣を原料とすることで排出量としてカウントされないCO2を固定することで、カーボンネガティブとして得たクレジットを販売することができます。こうしたバイオガス由来のCO2を固定し、そこで得られたクレジットを販売するビジネスは、すでに1つのモデルとして成立しつつあります。
またドイツのB社では、バイオガスを作ってメタンガスとCO2を分離し、それに水素と組み合わせることでエネルギーを生成するメタネーションという取り組みを進めています。バイオガス由来のCO2を原料とするメタネーションを推進しつつ、カーボンネガティブも実現している点が特徴的で、早期に経済合理性が得られる取り組みとして注目に値します。
バイオ由来のCO2を使ったメタネーションでは、水素の安定大量供給が重要になります。英国のある産業地区では、洋上風力によってグリーン水素や低炭素水素を生産し、水素を共有するインフラを構築することで2040年までに世界初のネットゼロ産業地区を実現しようとしています。この取り組みの見通しが立てば、さまざまな産業地区にロールアウトすることも可能で、想定以上のスピードで成果が拡大していくことも考えられます。