AIは急速に発展しているため、法律や規制、業界規範で責任ある行動について定め、標準化されたAIテクノロジーのガバナンスを確立するには、長い年月を要するかもしれません。その間、企業はAIが責任を持って使用されるように自主規制しなければなりません。しかし、企業はこの自主規制を、どのように行えばよいのでしょうか。イノベーションを阻害することなく、効果的にマネジメントすることはできるのでしょうか。
囲碁は2,500年の歴史を持つ、戦略ボードゲームです。2016年、Google傘下のDeepMindが開発したAI囲碁プログラム「AlphaGO」が、当時の人間の世界チャンピオン、イ・セドル氏に勝利しました。
この歴史を変える対局の重要な場面で、AlphaGoは奇妙な動きをしました。あるプロ棋士は次のように述べています。「人間がこのような一手を打つのは見たことがありません。」しかしそれがAlphaGoの勝利に貢献したのです。
AIはそのような驚きに満ちていますが、AlphaGoの新しい戦略のように、そのすべてが「美しい」わけではありません。例えば、Amazonは、AIを搭載した人材採用ツールが女性応募者に対して偏見(バイアス)を示した問題を受け、アルゴリズムを改善しようと努めましたが残念ながら叶わず、ツールを廃止しました。近年のこうした出来事もあり、ビジネスリーダーを対象としたアクセンチュアのグローバル調査では、88%もの回答者がAIに基づいた意思決定やアウトプットに自信が持てないと述べています。
AIは、従来のコンピュータ・プログラムに比べて予測が難しいだけでなく、ほとんどの企業にとって新しい技術です。AIの秘めるパワーは大きく、すでに多くの業界に変革をもたらしています。同グローバル調査では、ビジネスリーダーの85%が「AIによって新しい製品、サービス、ビジネスモデル、市場が生まれる」と予想し、78%が「今後10年間でAIによって自らの業界に創造的破壊が起こる」と回答しています。
AIはパワフルであると同時に、時として予測不可能であるため、AIアプリケーションに対する倫理やガバナンスに対する関心が高まっています。企業は、AIを利用することで意図しない結果を招く可能性を危惧しながら、その関心を高めてきました。しかし、懸念すべきは、誤った規制によってイノベーションが妨げられ、AIプロジェクトのメリットが抑え込まれることです。つまり、イノベーションの開花を促す適切なAIガバナンスが喫緊に求められているのです。