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調査レポート

レジリエンスの再定義:準備から再創造へ

5分(読了目安時間)

2025/06/12

概略

  • アクセンチュアの調査によると、パンデミック後のレジリエンスは回復しているものの、レジリエンスにとって重要なケイパビリティは弱化しています。

  • 一部のケイパビリティへ注力する一方で、他ケイパビリティを軽視することによって、レジリエンスは整合性を失い、重大な脆弱性をはらみつつあります。

  • 柔軟にレジリエンスを構築・強化している企業は、不確実性の中で同業他社を上回る成果を上げています。

パラドックスの顕在化

アクセンチュアの調査によると、多くのビジネス、経済、地政学的ショックの中で、パンデミック後のレジリエンスは回復しています。

2018年から2024年までのレジリエンス指数(アクセンチュア試算)の折れ線グラフです。2020年のパンデミックによる不況、2021年の回復、そして2024年末の現在のレジリエンスを強調しています。
2018年から2024年までのレジリエンス指数(アクセンチュア試算)の折れ線グラフです。2020年のパンデミックによる不況、2021年の回復、そして2024年末の現在のレジリエンスを強調しています。

しかし、レジリエンスが回復している事象は、重大な脆弱性をはらんでいます。企業は表層的にはレジリエンスを高めているように見えますが、内在的には分断や不整合が進行し、成長を停滞させています。

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分断するレジリエンス:格差の拡大およびリーダーの躍進

強力な組織と脆弱な組織の格差は広がる一方です。後者のレジリエンス指数(アクセンチュア試算)はさらに後退しています。

2018年から2024年までのレジリエンス指数(アクセンチュア試算)を示した折れ線グラフです。業界中央値に対する利益率と成長率で上位10%と下位10%の企業を比較しています。

アクセンチュアの調査は、多くのリーダーが感覚的に理解しているレジリエンスを定量化しています。レジリエンスは混乱が激しい環境において最大の価値を発揮します。真にレジリエントな組織は、混乱の中で同業他社を上回る成果を上げ、優れたレジリエンスのリターン(RoRes)を提供し、再創造のための地盤をさらに強固にしています。

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レジリエンスの見誤り:ツギハギのパッチワーク

近年レジリエンスを改善した企業のうち、すべてのレジリエンス領域が成長した企業はわずか4%でした。これは、レジリエンスの分断がより進行していることを示しています。

現在、最大の脆弱性は人財・オペレーショナルレジリエンス(適応性と実行力の基盤)に現れています。

2020年から2024年までの4つの期間において、コマーシャルレジリエンス、テクノロジーレジリエンス、人財レジリエンス、およびオペレーショナルレジリエンスがレジリエンス指数(アクセンチュア試算)にどのように貢献したかを示した棒グラフです。

再創造の基盤を構築するテクノロジーレジリエンス:パンデミック以来、テクノロジーレジリエンスはビジネスリーダーにとって最優先事項となっています。これはAI、データ能力、サイバーセキュリティ、そして最近ではエージェントアーキテクチャを含む次世代AIの発展によるものです。

コスト圧力と価格設定力のバランスをとるコマーシャルレジリエンス:企業は関税の上昇、原材料費の増加、需要の変動を受けて、どのコストを吸収・価格転嫁するかを迅速に決定する必要があります。そのためコマーシャルレジリエンスは、急激な圧力を受けています。

過小評価され、切り捨てられる人財レジリエンス: 生成AIとエージェントテクノロジーの導入が加速する中、多くの組織は技術投資を優先し、人財にはあまり注力していません。しかし、アクセンチュアの調査によると、技術と人財の両方を強化する企業は、長期的な利益成長を達成する可能性が4倍高くなっています。

見過ごされがちな重要領域であるオペレーショナルレジリエンス:アクセンチュアのレジリエンス指数は、パンデミック以前から持続的な低下傾向にあります。オペレーショナルレジリエンスの新たな基準は、突発的な変化に対して、業務を即時に切り替え、迂回し、再構成できる柔軟性ですが、この基準は満たすことが、多くの組織にとって困難になっています。

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レジリエンスの停滞による新たな基準の形成

混乱時に企業のレジリエンスを直接的に支える4つの中核的能力のうち、テクノロジー、人財、オペレーションの3領域において、レジリエンスの定義が急速に進化しています。これは、環境の変化によって、競争力を維持するために必要な条件が大きく変化しているためです。

  • テクノロジー:コアビジネスプロセスへの生成AIのケイパビリティの統合とエージェントアーキテクチャの導入

  • 人財:動的で拡張されたシステム内で人間とAIエージェントがどれだけ効果的に協働できるか

  • オペレーション:状況の変化に応じて、サプライチェーンの転換、生産の切り替え、パートナーシップの再構築を迅速に行う能力
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新時代におけるレジリエンス(しなやかに適応して不確実性を乗り越える力)

今後活躍するのは、しなやかに適応できるレジリエンスを経営に取り入れて、環境の変化を成長や競争力強化の原動力へ活用できる企業です。不確実性を成長機会に転換するために、企業に求められる取組は以下の通りです。

  • 不確実性を行動の好機として捉え、変動を戦略的な利点として再構築する。

  • 危機への対処としてではなく、今後に備えるために多極化した運用モデルを構築する

  • 人財を管理コストとしてではなく、戦略的優位の源泉として捉え、プラットフォームだけでなく人財にも投資する

  • レジリエンスをセーフティネットではなく、イノベーションのための手段として捉え、混乱の常態化を受け入れる企業文化を育む

行動しないリスクは目の前に迫っています。柔軟なレジリエンスを取り入れる企業は、混乱を乗り越えるだけでなく、それを原動力にリードし、成長し、未来を形作り、自らの意思で再創造を推進します。

全体像の把握

変革に向けて最も重要なレジリエンスを構築し、混乱を成長の機会に変えるための具体的なアプローチについては、レジリエンスの再定義レポートを詳しくご覧ください。

筆者

Muqsit Ashraf

Group Chief Executive – Strategy

Rachel Barton

Senior Managing Director – Accenture Strategy

Miguel G. Torreira

Managing Director – Accenture Strategy

Tomas Castagnino

Managing Director – Accenture Research

Ladan Davarzani

Senior Principal – Accenture Research

藤井 篤之

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター